お客様インタビュー – 伊勢市様

「相談する力」は自分を守る力。
子どもたちが安心して自分らしく過ごせる場所を創るために

子どもたちが抱える見えないSOSにいち早く気づき、寄り添うために、三重県伊勢市では匿名相談アプリ「スタンドバイ」を導入して4年目を迎えます。

今回は、伊勢市で子どもたちの支援に関わる福祉総合支援センターよりそいのみなさまに、導入の背景や、学校との連携を通じて子どもを救った具体的なエピソード、そして子どもたちへ向けた熱い想いをお伺いしました。

導入の背景と目的:いじめの早期対応で「重大化」を防ぐ

ーースタンドバイ小池(以下、小池):まずは、スタンドバイ導入の背景や、当時の課題感について教えてください。

出崎様:導入前の課題として、いじめに関して大きな問題があったわけではありませんが、いじめによって不登校になり、不登校が長引くと、ひきこもり、孤立といった福祉的課題に発展する可能性が高いという懸念がありました。
いじめに関する問題の複雑化もあり、早期にいじめ問題に取り組むことで、予防効果が高いのではないかと考えたことが出発点です。

いじめの相談というと我々も含めて学校や教育委員会というイメージが強かったところに、国の「地域におけるいじめ防止対策の体制構築の推進」のためのモデル事業の公募がありました。これは、学校や教育委員会とはちがう首長部局がいじめの防止に取り組む事業で、多様な専門職が配置されている当センターの機能を活用して問題解決できればと考えたのです。

「生の声に寄り添う姿勢」と「代表の熱い想い」が決め手に

ーー小池:数ある手段の中で、スタンドバイを選んでいただいた決め手は何だったのでしょうか?

出崎様:その中での取り組みを検討しているところで、四日市市の取り組みでスタンドバイを取り入れていることを知り視察へ行きました。そこで子どもたちの生の声を聴き、直接に子どもたちに返信しているところがよい取り組みであると感じました。

また、スタンドバイ様に話を伺ったときに、代表自身が子どものころのいじめ体験から、いじめを受けて辛い思いをする子どもたちを一人でも減らしたいという熱い思いに触れたことも大いに惹かれたところです。
さらに、子どもたちがアプリを使用するとともに、学校へ出向き、いじめ防止授業を行い相談することの大切さを伝えていただくということも決め手になりました。

誰にも言えなかった「深刻な悩み」。学校との地道な連携が子どもを救う

ーー小池:実際にスタンドバイを活用して、早期対応や解決に繋がった印象深いエピソードがあれば教えてください。

浅井様:生徒から、信頼していた相手からの言動に振り回され不安や後悔の思いが強まり、長期に渡って継続的に相談が寄せられたケースがありました。

内容は、周囲に絶対に知られたくない、非常に深刻な悩みでした。親にも友達にも知られたくない、言えないという状況で、一人で抱え込んでいました。

そんな中で、困ったときに「あ、こんなアプリがあったな」と相談先の選択肢として思い出してくれ、実際の相談につながったのは本当に良かった点でした。このような繊細な事案では、周りの大人からの不用意な声かけが本人を傷つけてしまう恐れがあります。そのため、学校との連携の際には「学校に知られたのではないかと感じないように動いていただく」という、非常に難しい対応をお願いしました。

ーー小池:連携はスムーズに進んだのでしょうか?

浅井様:学校には、今回のケースでも、非常に協力的に連携していただきました。対応に関して関係機関で支援方針を統一し、外部助言も踏まえつつ綿密な連絡を取り合い対応することができました。全体への啓発を前倒しで実施してくれたり、新年度のクラス編成を急遽本人が安心できる形に変更してくれたりと、臨機応変に動いてくださいました。

実は、ここまで学校とスムーズに連携できるようになった背景には、1年以上にわたる地道な関係構築がありました。導入当初は、協力を得られないことは多々あり、決して簡単ではありませんでした。

しかし、「私たちは押し付けるのではなく、役割分担をして私たちが持っている情報を出し、一緒に子どもたちのために協力させてほしい」と伝え続けました。少しずつ事例を重ね、「このアプリは子どもたちのために役立つんだ」と理解していただけたことが、今回のスムーズな連携と、早期解決に繋がったのだと思います。

最終的に、その生徒は自ら先生に不安を伝えることができ、悩みごとは解決され相談を終えることができました。学校の協力のもと、途切れることなく相談を続けられたこと、そして本人が自分自身の力で解決できた感覚を持てたことが、本当に素晴らしい結果だったと感じています。

「ここに来れば大丈夫」。自分らしさを大切にできる居場所へ

ーー小池:今後の展望や、スタンドバイを通じて実現したいことについてお聞かせください。

出崎様:アプリを導入して4年目になりますが、匿名相談アプリは相談件数からみても、子どもたちの身近なものになりつつあると実感しています。
子どもたちには、毎日を「頑張り続ける」だけでなく、困ったときは安心して誰かに頼り、自分の気持ちを大事にしながら学校生活を送ってほしいです。学校がつらい日があっても、「一人で抱え込まなくていい」「相談していい」と思えることは、とても大切で、スタンドバイが、その“安心して話せる選択肢”の一つになり、子どもたちが自分らしく学び、成長していける環境につながればと思います。

スタンドバイの取り組みを通じて、子どもたちに「ここに来れば大丈夫」「困ったときは頼っていいんだ」と感じてもらえる安心感を届けたいと思っています。
子どもは誰しも、それぞれに必ずいいところがあります。元気さ、やさしさ、がんばり屋なところでも、強さでも、まだ自分では気づいていない良さが、きっとあります。長所と短所は表裏一体なところがあり、子どもたちが自分の良くないところと感じて悩むことがあっても、それは良いところにもつながっています。

だからこそ、うまくいかない日や自信がなくなった日があっても、「あなたにはいいところがある」というメッセージを伝え続けたいです。スタンドバイが、子どもたちが自分の良さを大切にしながら、安心して毎日を過ごせる場所の一つになればと思っています。

伊勢市の子どもたちへ 〜「相談する力」を身につけて〜

ーー小池:最後に、伊勢市の子どもたちへ、どのような学校生活を送ってほしいかメッセージをお願いします。

出崎様:これから高校へ進学して卒業したあとも、困ったときに一人で抱え込まず「相談する力」を身につけてほしいと願っています。誰かに頼ることは弱さではなく、自分を守る大切な力であると思っています。スタンドバイでの経験が、子どもたちにとって自信につながり、これから先の人生でも支えになるよう関わっていきたいです。

長い人生の中で学校生活は、限られた時間です。私たち大人が戻りたいといくら思っても戻れない友人や先生たちと過ごす大切な時間だと思います。その尊い時間を誰であっても奪うことは絶対あってはならないことです。
伊勢市の子どもたちが、学校時代を振り返ったときに、よかった、楽しかった、かけがえのない時を過ごせたと思えるような友だちとの貴重な幸せな時間を過ごしてほしいと思います。